理事長所信

光
~あなたの輝きが、まちを面白くする~
はじめに
西宮青年会議所は、本年で創立75周年を迎えます。1950年6月3日、戦後の混乱期において、西宮青年会議所は、日本で5番目のLOMとして設立されました。この長い歴史を紡いでこられたのは、先輩諸氏が時代の変化に先駆け、新たな課題を発見し、その主体的かつ自発的な姿勢が人々の共感を生み出して、運動の輪を広げてきたからです。
私が理想とする西宮青年会議所の姿は、まばゆい「光」によって、「まちを面白くしていく」というものです。私たちがまばゆい「光」を放つためには、会員一人ひとりがまちにより良い変化を起こすことのできるリーダーへと成長する必要があります。
仏教に「身口意一致」という教えがありますが、私はこれこそがリーダーに必要な要素であると考えます。身(行動=やっていること)、口(言葉=言っていること)、意(心=思っていること)が一致することで、より良い人生を歩むことができるという考え方です。言葉と行動だけが一致していても、心で思っていないことであれば、気持ちのこもった行動にはならないため、「言行一致」では不十分です。「身口意一致」は、強い思いを抱き、言葉に発し、行動するなら、その思いは実現し、「なりたい自分になる」ということにつながります。今の自分は、これまでの自分の身口意が積み重なってできたものです。将来、「なりたい自分」になっていくためには、現在の自分の心を見つめ直し、言葉と行動を一致させることを意識する必要があります。そして、そのプロセスを意識的に繰り返すことで、自分自身の心、言葉、行動はより良く変化していきます。
私は、青年会議所の会員として持つべき「意」は、他の誰かを思いやる心であり、他の誰かとは、家族や志を同じくする仲間、まちの市民であると考えます。大切なことは、強い思いを持ち、言葉と行動が一致するように努力し続けることです。私は、これこそが青年会議所における修練であると考えます。
品格ある青年である私たちが、本気で目の前の人やまちを、より良くしようと思い、それを言葉に表し、行動を起こせば、その思いは必ず実現すると信じています。
先輩諸氏がそうしてきたように、私たちも、創立75周年を迎えるこの年に、今一度、西宮青年会議所会員としての「意」を見つめ直し、その心に基づく言葉と行動で、どのようなことがあっても挫けることなく、全てのことを前向きに捉え、運動を展開していきましょう。
身口意一致した私たちは、まばゆい「光」となって、このまちを明るく照らし、面白くします。
拡大委員会
私たちが青年会議所の会員として活動できていることは、当たり前のことではありません。これまで75年もの間、先輩諸氏が絶やすことなく、拡大活動を継続してきたからこそ、今の私たちが存在しているのです。拡大活動は、青年会議所が設立されて以来、途絶えることなく継続している事業です。会員拡大活動は青年会議所運動そのものであり、直接市民に対して青年会議所の理念を伝え、意識変革を促す機会であることを忘れてはなりません。目の前の誰かを青年会議所に招くということは、その誰かの成長と発展を心から思うということです。拡大活動は、その思いを言葉と行動に変えることに他なりません。創立75周年を迎えた今こそ、拡大活動における「意(心)」を見つめ直し、「口(言葉)」と「身(行動)」に一貫性を持たせましょう。拡大活動も、身口意を一致させるための修練の場となるのです。
そして、この組織が力強い「光」を放つためには、多種多様な個性が調和している必要があります。多種多様な会員がいるからこそ、様々な視点での意見やアイデアが生まれ、市民を巻き込む力強い運動を起こすことができます。近年、西宮青年会議所は毎年25名の会員拡大に成功していますが、30代後半の会員が半数以上を占めています。私たちは、輝く個性が調和して、幅広い人財が活躍できる組織であり続けるために、20代の会員拡大にも注力し、さらに多様性ある組織を築くことを目指します。
その前提として、私たち会員自身が西宮青年会議所に対してポジティブでいる必要があります。西宮青年会議所に対してポジティブであるからこそ、自らの大切な人を招きたいと心から思うことができます。これもまた、拡大活動における「意(心)」であり、それに基づく「口(言葉)」と「身(行動)」が一致すれば、自ずから仲間は増えていくはずです。従来の拡大手法をブラッシュアップし、新たな拡大手法の構築にも着手しつつ、全ての会員が拡大活動に取り組む意識を改めて醸成します。会員一人ひとりが、会員拡大の必要性を理解し、組織全体で意識を高めることで、持続的な会員拡大につなげていきます。
多種多様な個性が調和した組織が放つ「光」は、さらに明るい未来を照らし出します。
育成交流委員会
西宮青年会議所の組織としての力は、単に会員数に比例するものではなく、会員一人ひとりが持つ個性や能力を存分に発揮することによって、その力はさらに強固なものとなります。現在、西宮青年会議所の会員は、約3分の1が新会員であり、また、半数以上が入会から3年未満の会員で構成されています。このような状況で、西宮青年会議所の組織としての力を最大限に発揮するためには、新会員を含むすべての現役会員が、一人ひとりの強いリーダーシップのもと、共通の目的に向かって力を結集することが重要です。
青年会議所活動では、数多くの成長の機会が提供されますが、その機会にどのように向き合うかによって、成長の度合いは全く異なるため、向き合い方を学ぶことが必要です。青年会議所活動の目的は「明るい豊かな社会の実現」です。創立75周年を迎えた今、青年会議所の目的、理念を見つめ直し、会員一人ひとりが目の前の人やまちを、より良くしようと本気で思い、その思いと一貫する言葉と行動をとれる人財になるための方法を学ぶことが、青年会議所活動における個々人の成長の基盤となります。そして、このような人財こそが、青年会議所のみならず、変化の激しい時代において必要とされるリーダーであり、このようなリーダーシップの開発が青年会議所の使命として謳われています。そのために、新たに入会する会員はもちろん、既存の会員も改めて青年会議所の理念とその意義を深く理解・共感し、積極的に公開委員会を開催することで青年会議所での成長の機会を余すことなく活用する学びを提供します。
また、人は一人で成長することはできず、他者との関わりの中でこそ、その個性や能力が磨かれます。したがって、他者との交流が必要不可欠であり、「身口意一致」の教えにおいても、「意」は他者を思いやる心であることから、まず身近な会員を大切にする心を持って、それに基づく言動を心がけることで、より成長することができます。そのために、定期的な交流の場を設けるよう働きかけ、同じ入会年の会員のみならず、会員全員が交流を深めることによって、自分にはない新たな知見を獲得し、自己の可能性を広げるとともに、個性の調和によって組織力の向上を図ります。
個々人の理念共感と青年会議所の会員間の強固な絆が深まった組織は、力強い「光」となって未来を明るく照らします。
75周年特別委員会
西宮市は、文教住宅都市として発展し、「住みたい街ランキング」では常に上位にあり、約7割の市民が西宮市に対して、愛着や誇りを感じています。現時点において、西宮市が魅力あるまちである理由は、大阪や神戸等の都市部への交通アクセスの利便性や、子育て環境と大学等の教育機関の充実、ショッピングセンター等の商業施設が整っていること、海・山・川の自然環境が豊かであること等が挙げられますが、これらは、数多くの人が介在していることが前提となっています。つまり、介在する人が減少すれば、公共交通機関や教育機関、商業施設等は採算性の悪化によって現状を維持できなくなり、自然環境を維持するための整備も困難となる可能性があります。私たちが享受している西宮市の魅力は、数多くの人が介在していることに支えられていることは否定できないと考えます。
一方、人口減少や高齢化は加速度的に進み続けており、西宮市の人口は2050年には、現在の48万人から44万人に減少すると予測されています。したがって、このままの状態では、西宮市の魅力が低減していく可能性がありますが、人口減少や高齢化が進む時代の中でも、このまちに住まう人々が、いつまでも地域に愛着や誇りを感じ続けるために、このまちを盛り上げる新たな魅力ある地域を象徴する存在が必要です。西宮市制施行100周年を迎える本年を機に、老若男女から愛される西宮のシンボルを生みだすことによって新たな価値を創出し、西宮をより魅力的なまちへと進化させていきます。
また、西宮青年会議所創立75周年記念式典・祝賀会では、創始の気概に想いを馳せ、先輩諸氏の西宮青年会議所に寄せた想いと実績を振り返った上で、これからの西宮青年会議所の目指す姿を、同志である各地青年会議所や関係諸団体、先輩諸氏に発信することで連携をより強固なものとし、これから私たちが展開する運動に対する共感の基盤を構築します。さらに、75周年記念事業として周囲を広く巻き込み、市制施行100周年とその先へと続く未来を見据え、西宮青年会議所だからこそできる西宮のまち全体に波及する事業を展開します。複数の委員会が連動して実施する事業によってインパクトの大きな運動を起こすことで、西宮青年会議所の存在価値をさらに高めることができます。
これらの取組みによって、私たち西宮青年会議所がまちから必要とされる存在として地域の希望の「光」となり、西宮を魅力的に照らし続けます。
青少年委員会
内閣府が発表している日本を含めた諸外国を対象とした自己肯定感の意識調査において、日本の青少年の自己肯定感は、先進国では最も低い調査結果となっています。日本人の自己肯定感は生まれつき低いわけではなく、年齢が上がるにつれて下がることが分かっています。自己肯定感の低下は、生きる意欲や学ぶ意欲、人と関わる意欲、立ち直る意欲など、あらゆる能動的な活動意欲の低下につながります。
また、日本の学校教育は、画一的なアプローチによって、平等に学習機会を提供しながら教育していくことに重点を置いてきました。その結果、他者との比較が強調されることが多く、個々の違いを尊重する機会が限られているため、自分の個性を見つけにくくなり、失敗への恐れが自己肯定感を低下させる要因となっています。しかし、青少年の自己肯定感をただ高めれば良いということではなく、自分の個性を認識した上で、目標と現状の差を埋めるための方法を考え、その方法が成功した時も失敗した時も、その原因を短絡的に能力に帰属させるのではなく、「チャレンジできた」というプロセスを肯定的に捉える感性を育てる必要があります。これからは、青少年一人ひとりが「結果」にとらわれず、プロセスを重視する感性を育み、その個性を最大限に伸ばし、得意分野で能力を発揮できる人財の育成が求められています。そのために、まず私たち大人が、現状に満足することなく、未知の課題に対してチャレンジし続ける存在として、青少年の手本となるようなリーダーに成長し、青少年に対して適切な自己肯定感を育む方法を提示できるようにならなければなりません。そして、私たちは、青少年と共に主体的に個性を表現できる場を創出し、チャレンジ精神を持った次世代のリーダーを輩出し、地域社会の発展に貢献できる人財を育成します。
私たちは、青少年が自己の可能性を信じ、眩い輝きを放つことができるように、青少年に「光」をもたらします。
国際委員会
西宮青年会議所は、国際青年会議所(JCI)につながる組織であり、国際青年会議所は世界で112か国が加盟し、約17万人もの会員を擁する世界最大の青年組織です。「青年会議所の魅力は国際にある」と言われる所以は、この規模の大きさにあると言っても過言ではありません。その中でも、西宮青年会議所は、クアラ・ルンプールJC(マレーシア)、ドラゴンJC(香港)と姉妹締結しており、毎年ASPACにブースを出展し続けてきた数少ないLOMです。私たちは、このように国際の機会を得る上で非常に恵まれた環境にありますが、組織として、その機会を活かしきれていない現状があります。
また、日本はIMD世界競争力ランキングにおいて過去最も低い順位となっており、特に「ビジネス効率性分野」においては低評価を受けています。中でも「国際的な経験」は最下位となっており、これは私たちが直面している大きな課題です。また、日本全体が少子高齢化による働き手不足という問題を抱えており、その解決策の一つとして外国人労働者の受け入れが進んでいます。西宮市でも外国人住民数は年々増加しており、この傾向は今後も続くことが予想されます。このような状況の中、経済や地域を活性化させていくためには、国際的な視点を持ち、日本人という枠に捉われるのではなく、外国人との国際協働関係を構築し続けられる次世代のリーダーが求められています。会員は、西宮青年会議所が有する豊富な国際の機会を余すことなく活かすことで、そのようなリーダーに成長することができます。具体的には、海外で行われる事業に積極的に参加することや、国際姉妹青年会議所との交流を促進することはもちろんのこと、西宮という地域から国際的な運動を展開する必要があります。会員一人ひとりが、国際的な視点で考え、地域で行動する「グローカル」の考え方を身に付け、外国人との国際交流を地域から生み出す多文化共生社会を目指すとともに、地域資源に国際的な視点を組み合わせることで新たな価値を生み出す機会を創出します。
私たちの国際的な取組みは、このまちの国際化を先導する「光」となります。
戦略総務委員会
組織が持続可能な成長を遂げるためには、西宮青年会議所の組織運営を司る総務としての責務を迅速かつ確実に全うすることはもちろんのこと、技術の進歩や会員の組織に対する価値観の変化を正確に捉え、より効率的な組織運営を目指して、積極的に問題提起や改善の提案を行う「戦略総務」が必要です。そのために、変化に対応するのではなく、変化をリードする心持ちで組織運営に取り組む戦略を考案します。
また、多くの団体や個人が地域に向けて情報を発信する中、私たちが展開する運動が社会からより多くの注目を集めるためには、戦略的な情報発信が求められています。新たな媒体の活用等、既成概念にとらわれない手法によって、私たちの想いを伝播させ、市民の共感を生み出す対外広報活動は、青年会議所が展開する運動の基盤として、市民の意識変化とまちのための行動を促すきっかけとなり、ひいては会員拡大へと発展していく活動でもあると考えています。これまでも、SNSを活用した発信を行なってきましたが、写真や文章を使った発信だけに拘らず、「何を伝えたいのか」、「誰に伝えたいのか」等を分析した上で、西宮青年会議所が持つ魅力を最大限に伝える対外発信を行います。そして、それと同時に、西宮青年会議所の運動をより効果的に広げるためには、多くの共感を集められるように、ブランディングに取り組まなければなりません。創立から75年に亘って途切れることなく、まちのことを本気で考えて行動し続けていることこそが、私たちのブランドであると考えます。私たちの活動が地域社会にどのように貢献してきたか、そして、どのような未来を描いて行動しているのかということを、各種媒体を用いて戦略的に対外発信することで、ブランディングを行います。
また、対内に対する情報発信も重要です。在籍年数が短い会員が多くを占めるからこそ、まずは私たち自身が西宮青年会議所の魅力を感じ、西宮青年会議所を大好きになることが必要です。また、会員が活動しやすい環境をつくるためには、各委員会の連携が欠かせないため、各委員会の活動の可視化が必要です。そのために、各委員会の活動状況や情報を定期的に対内発信することで、円滑な青年会議所活動を実現し会員同士が切磋琢磨し、互いに高め合える土壌を形成します。
これらの戦略的な取組みを通じて、私たちが放つ「光」は最大化され、広く地域に届けられます。
むすびに
私は、西宮で生まれ、西宮で育ちました。西宮青年会議所の歴代理事長でもある父の紹介により、2017年に青年会議所に入会しました。入会の際、父から言われた言葉があります。
「青年会議所には全てがあった。それが何か見つけて来い。それが見つけられるかは自分次第やけどな」
この言葉を胸に、これまでの青年会議所活動において、「全て」が何であるかを探し続け、仲間とともに、様々なまちの課題に向き合ってきました。
その日々の中で、青年会議所の存在は、日本最古の歴史書「古事記」に記載されている天岩戸(あまのいわと)のエピソードのようだと感じました。
天照大御神(あまてらすおおみかみ)は、弟の須佐之男命(すさのおのみこと)の乱暴な行動に怒り、天岩戸という洞窟に隠れてしまいました。その結果、世界は暗闇に包まれ、人々は希望を失いました。しかし、八百万の神々は諦めず、思兼神(おもいかねのかみ)を中心に、天照大御神を洞窟から出すために知恵を出し合い、宴を開きました。天宇受売命(あまのうずめのみこと)は滑稽な踊りを披露し、神々を大いに笑わせました。その笑い声に誘われて、天照大御神は「なぜ外でこんなに楽しそうにしているのか」と気になり、岩戸を少しだけ開けました。その瞬間、天手力男命(あめのたぢからおのみこと)が岩戸を全開にし、再び光が世界に戻りました。
このエピソードは、課題の解決に本気で向き合って行動することの大切さと、多様な個性と能力を活かし、協力と団結によって共通の目標を達成することの重要性を教えてくれています。
「面白い」、「楽しい」の語源もこのエピソードに関連しています。岩戸から出てきた天照大御神の光によって、神々の「面(顔)」が「白く」はっきり見えるようになった様子が「面白い」の由来と言われており、顔が明るくなって笑顔になっていることを表しています。そして、光が戻ったことに対して手を伸ばして大喜びした様子を「手伸し(たのし)」と言い、これが「楽しい」の由来と言われています。
そして、この天岩戸のエピソードの中で、暗闇に包まれるという困難な時に、みんなで賑やかに踊り、盛大にお祝いしたことが、今の日本のお祭りの始まりと言われています。
暗闇の中にいる時でも、全員で前向きに行動すれば光が差し、「面白くなる」ということを教えてくれています。
私はこれまで青年会議所で、数多くの例会や事業の構築に携わってきましたが、多様な会員の個性と能力がうまく組み合わさった時には、最高の例会、事業をつくることができました。また、例会や事業を構築する中で苦しく、まるで暗闇の中にいるような心地がしたとしても、楽しみを見出して「楽しそう」にしていれば自然と同志が集まり、「光」が差してくるような感覚を何度も味わってきました。
私には、共通の目的に向かって本気で取り組んでくれた仲間の姿が、とても輝いて見えました。
今、世界に目を向けると、戦乱や貧困、環境問題等、数多くの課題が山積し、まさに暗闇に包まれているようです。このまちも例外ではなく、理想の姿には程遠く、未来への希望があふれているとは言い難い現状があります。
しかし、このような時こそ、世界に光を取り戻した神々のように、私たちは団結して、まちに笑顔と希望をもたらすことが必要です。
私自身も、天宇受売命が踊りで神々を笑顔にしたように、常に前向きに行動し、周囲に「光」をもたらす存在でありたいと思っています。
私たちは1人では何もできませんが、周囲を巻き込んで何かが始まるときは、ある1人から始まります。
私たちは、常に、このまちのことを本気で思い、それを言葉と行動に変える最初の1人であり続けましょう。
私たちが起点となって、全員の力で「面白いこと」を起こし続けましょう。
あなたの輝きが、まちを面白くする。