理事長所信

進歩
~未来を創る自負と自覚~
はじめに
未来は今の行動によって創られます。
私たちは、自分自身や子供たち、まちのより良い未来が続くことを想い日々の行動を選択しています。
そして、私は、その選択の一つとして青年会議所に入会し、これまで活動してきました。では、何を求めて青年会議所活動をするのか。それは、自己の成長を願い、友情を育み、自分や家族、愛する人の未来や住まうこのまちがより良くなることを求めているからです。
だから私たちは、青年会議所活動が、より良い自分や未来を創る一つの手段であることを再確認すると同時に、私たちの活動が自分自身やまちの未来を創っていくという意識をこの組織の文化として今一度根付かせていきます。2020年、新型コロナウイルス感染症の影響によりこれまでの常識が大きく変化しました。このような時代だからこそ、既存のものに対し本質を問い、新たな常識、そして未来を創りましょう。
常識を塗り替え、より運動が広がる未来
新型コロナウイルス感染症が発生するまでの社会においては、人と人とが膝を突き合わせてコミュニケーションを取ることを是とし、西宮青年会議所においてもその価値観に基づき多くの活動をしてきました。これが新型コロナウイルス感染症の蔓延により大きく変化しました。人と人が集まることをリスクと捉え、一つの場所に集まることなくコミュニケーションを取る必要が生じました。この変化により、私たちは多くのことに気付きました。
まずは、通信手段が発達した現代において、情報伝達や情報共有などは、直接対面することなくオンラインでも代替可能であるということ。その一方、例会や事業を創り上げる諸会議など、新しいものを創り出す工程においては、オンラインで全てを満たすことができないのではないかと感じました。
様々な個性が集まり、多様な価値観や視点を有することが当組織の優位性であるところ、それが体現化するのは様々な意見が飛び交う会議の場であり、膝を突き合わせた懇親の場でした。そこでは、取り組む活動に対する熱量を面と向かって伝え、賛同的、ときには批判的な意見も受け入れることによって新しい発想を生んできました。これら全てをオンラインによって代替可能であるとは言えません。
では、私たちはどのような行動を取るべきなのか。それは、常識という旧体制に対する変化を受け入れた私たちだからこそ、旧体制を塗り替え、私たちの運動が最も効果的に展開される新体制を生み出していかなければならないのです。会議運営や定例行事、慣習など、これまでは常識という固定観念で思考停止していた様々な旧体制を、その利点を活かしつつも今の私たちの活動における最適な新体制へと創り変えていきましょう。
理想の会員拡大、そのための広報の未来
新体制への変換を試みるにしても、40歳となる年に卒業するという制度を持つ当組織において、会員拡大活動は常に必要不可欠です。近年、一定数の拡大に成功していますが、それは担当委員会を始めとする会員の「個」の拡大活動の成果であることが否めません。組織全体で行う「全」の拡大の仕組みづくりはまだまだ完成していません。
理想の拡大は、私たちの活動を知ってもらい、理解、共感を得て、共に活動したいといった想いが生まれ、入会へと続くことです。その理想の実現のためには次の2点が必要になります。
1つ目は、私たち会員自身が青年会議所活動、青年会議所運動に取り組む意味を理解し、 私たちの取り組みがより良い未来につながるということを意識して活動することです。そのためには一つひとつの活動が持つ意味を知る者は伝播していかなければなりませんし、これから知る者が疑問を投げかけやすい風土を作っていかなければなりません。新会員と既存会員の交流、当組織の活動と運動や存在意義の言語化による共通認識、それらが組織の中で根付いたとき、会員はより主体的に活動に取り組むことができ、その姿は多くの人々に魅力的に映るでしょう。それが拡大へとつながり、延いては自分づくり、未来づくりへとつながるのです。
2つ目は、認知のための広報、そしてファンづくりのための広報が必要になるということです。広報なくして拡大の仕組みづくりは叶いません。これまでの「個」の拡大活動に加え、組織が発信する情報によって、私たちの活動、魅力を伝え、理解いただき、賛同者を増やしていくことが組織全体での拡大活動となります。これにより拡大は「個」と「全」 の相乗となり、より多様な人材へ扉を開くことになります。SNSや動画共有サイトの発達、浸透により誰もが情報の発信者になることが可能になりました。情報は世の中に無数に溢れ、これまでは受動的であった情報収集は、自ら情報を取得しにいく能動的なものに変化しています。そのような中、私たちの活動を無思慮にSNSやホームページなどを介して情報を流すだけではその効果は決して高くはないでしょう。その情報を求める人はどこに存在しているのか、そこにどのようにして情報を届けるのか、そしてその情報にどうやって感銘を受けてもらうのか、これらを考えて情報を発信しなければなりません。そのためには情報を求めている人について知らなければなりませんし、情報収集、情報発信についての調査研究も怠ってはなりません。そしてなにより、私たちの熱量、つまりはその発信する情報源である会員の活動やその運動を理解した上で発信しなければなりません。
これらの広報によって、私たちの活動、そこからつながる未来づくりに共感を得ることで、自ずと仲間は集まり、ファンを生み出すでしょう。
多様性ある組織の未来
また、71年という歴史の中でここ数年、少しずつではありますが所属する会員に多様性が見られるようになってきました。女性会員の増加がその傾向の表れです。女性会員が増加したほうが組織にとってよいのは、単に男女の比率を近づけ平等な社会を作ろうといったものだけでなく、女性が組織の中で活躍することで組織全体のパフォーマンスが高くな ることが、統計上明らかになっているからです。これは、男女の違いに限らず、年齢、国籍、職種、知識、能力などにおいても同じです。
私たちの活動は未来をより良くすることにつながっていて、多様性があるほうがイノベーションが起こりやすく、未来を創っていく当組織の構成としては良いのです。そして、当組織は、多様な個性が集える場であるので、互いの違いを知るためのコミュニケーションを図りながら、異なる価値観を受容し、多様性を寛容できる文化づくりに取り組みます。明るい豊かな社会の実現という理念のもと、女性会員や多種多様な職種の会員を増加し、異なる個性が溢れ、互いを理解し、尊重し、共に成長できる組織づくりを目指します。
共に手を取りあえる未来
2020年2月9日、西宮のまちで1,146発の花火が上がりました。当団体が70周年記念事業として開催した「西宮花火大会2020~忘れない、いま私たちにできること~」です。この花火大会は、1995年に発災した阪神・淡路大震災の被災者に想いを馳せるとともに、今後高い確率で発生するとされている南海トラフ地震や近年直面している自然災害に対して、備える意識を持つ契機とするという想いを込めて打ち上げられたものです。
大きな自然災害に直面したとき、市や国による救助活動や支援物資提供などの公的支援である「公助」により全てを補い救うことは不可能です。「公助」に加え、各家庭での備えや災害発生時のシミュレーションを事前に行っておくなどの「自助」や、地域の力で要援護者の避難協力、消火活動や助け合いをする「共助」といった、「自助」「共助」「公助」が互いに連携して、そのつながりを強めている必要があります。先の花火大会においては、その「自助」の意識を向上させ、有事の際に救える命が一つでも多くなり、悲しみを一つでも少なくするといった想いがありました。
その「自助」意識の向上を踏まえ、2021年は、「共助」意識の向上に取り組みます。快適で魅力的である西宮というまちの住環境を支えるのは、地域の自治会や地縁団体などの地域コミュニティでもあります。それら団体も、永続的に発展することが見込まれるわけではなく、構成員の減少や高齢化など様々な課題を抱えています。地域の未来は私たちが当事者として創っていくという意識を持ち、地域のつながりを強めていかなければ「共助」が機能せず、自然災害などの有事の際はもちろんのこと、西宮のまちの魅力も減ってしまうでしょう。それらの課題を解決に導くためには、地域の人々のつながりを創ることにより、自ら考え、助け合い、お互いを気遣うことができる、そして問題や困難に直面したときには力を合わせることができる「共助」の関係づくりが必要となります。それを実現することで、まちの人々のつながりが強まり、住まう人々にとって愛着が持てるまちへと変化していくでしょう。
仕事を通じて創る未来
青年会議所活動は仕事に通ずるものと考えます。仕事は、社会的課題や社会が必要としているものに対し、商品やサービスを提供し、その対価として金銭を得ます。一方、青年会議所活動では、社会的課題や社会が必要としているものに対し、例会や事業を行い、その対価として自己成長を得ます。どちらも社会が抱える課題やニーズを解決し、より良いものを生み出し、より良い未来を創るための活動です。
そして、青年会議所活動を続けることによって得た自己成長により、仕事における商品やサービスが向上し、さらなる仕事の発展につながり、より良い未来が創られるといったサイクルが生まれます。つまり、私たちは仕事の発展のために青年会議所活動に取り組むのであり、青年会議所活動に取り組むことが仕事の発展につながるのです。ですから、青年会議所におけるビジネスの機会とは、単に団体の中で仕事を獲得するといったものではなく、青年会議所活動を続けることを通じて得られるマインドセットもその一つです。また、より良い未来づくりのためには、仕事においても課題の変化に対応できる取組みが必要になります。
そこで2021年は、仕事の発展につながるスキルとマインドを向上させる研修事業を行い、課題分析力、解決力の向上、組織マネジメント、変化への対応など、社会動向の変化を踏まえた上での個人的修練の場を提供することで、仕事の発展につなげ、さらなる自己成長を遂げる機会を提供します。
生きる力をつなぐ未来
私たちが創る未来を生きるのは今の青少年です。私たちが描いた未来を青少年が生き、さらに良いものにして、次なる世代につないでいく、これがこれまでの社会でつながれてきたバトンです。
未来の社会は、新型コロナウイルス感染症の影響により時間管理から成果主義、テレワークといった新たな働き方が定着し始めるなど大きく変化していくでしょう。そして未来を生き抜くためには、変化に対応できる力を身に着けることが必要になります。その力とは、課題解決能力であり、つまりは、今起こっている問題、課題を分析し、その原因を探し出し、解決策を考え出す能力です。
青年会議所は、まちの問題や個人の課題を分析し、事業や例会を通じてそれらを解決に導くといった構造で活動しています。仕事においても人々の問題、ニーズを分析し、商品やサービスを通じて解決していくので同じです。これらの課題解決能力を育み、活用していくことが、これからの変化の時代を生きる青少年に必要な能力です。そして、課題解決能力を備えた青少年が増えることで、まちや未来の課題は解決可能性を高め、まちは発展し、より良い未来へとつながっていくのです。
そこで、2021年は青少年に対し、この課題解決能力を身につけるための取り組みを行います。課題を見つけ出し、解決へと導くための行動に移すこと、つまりは、発見、考察、決定、行動、検証を行い、自らの力で解決する知恵と自信を得た青少年は、やがて青年となり、私たちのバトンは受け継がれ、彼らがさらに良い未来を創り、次なる世代に受け継がれるでしょう。
家族、同志とともに創る未来
青年会議所において、多様な個性や価値観、視点を持った会員と出会えることが当組織の 優位性ですので、会員間の更なる交流に取り組みます。在籍年数の枠を超えた交流を増やすことにより、新たな刺激、気付きを得ることは、自らの描く未来を広げる機会になります。そして、その機会を活かし、自らが行動に移すことで、仲間とともに成長する未来を創っていきましょう。
また、私たちが未来のために活動している日々は、家族や愛する人の支えがあってこそ成り立ちます。私たちが、未来をより良くするために自らができることを考え、悩み、その答えを同志とともに探していく、その活動に取り組む姿や同志の姿を家族や愛する人に知ってもらい、理解を得て応援してもらい、その支えをさらなる活力とし、家族や愛する人の笑顔が溢れる未来を共に創りましょう。
そして、同志は、西宮青年会議所の会員に留まらず、志を同じく活動している会員が日本全国、世界各地にいます。西宮青年会議所は、国内では一般社団法人函館青年会議所、一般社団法人浪江青年会議所、南双葉青年会議所と姉妹締結をしており、他の青年会議所とも友好を深めています。各地域で抱える課題は様々であり、同種の課題に向かい合うこともありますし、地域特有の課題もあります。そして、私たちと同じように、各地域でそのまちの課題を解決すべく活動し、その活動の中で自己の成長を得ています。兵庫県、近畿、日本全国、世界各地の同志との出会いは自らの振り返りの機会となり、見識を広げ、自らの成長へとつながるでしょう。青年会議所活動はそれらの出会いの機会に溢れていますので、その機会を提供することで、会員は自己成長の場を得て、活動は活発化し、さらなる地域の課題解決に向かう未来へとつながっていきます。
逆境に備え、行動する未来
また、2021年は大規模災害などの社会的混乱が生じる事態に対し、「自」と「他」の二つの取り組みをします。
一つ目は「自」の緊急時対応です。緊急事態が発生した際に、特命組織を立ち上げ、今後の対応方針を検討し、各種関係機関や官庁と連絡、調整を実施できるよう、事前にフレームワークを定め、指揮命令系統のプロセスを想定し、準備を調えます。緊急時の連絡体制、安否確認、現状把握を行った上、そのとき私たちができる最良と思われる活動を検討し 、行動に移します。大規模災害や感染症の蔓延などにより社会が混乱し、問題が顕在化したときにこそ、私たち青年会議所の存在意義が問われるときであって、そのときになって動き出すのではなく、事前に可能な備え、準備を進めていかなければなりません。
二つ目は「他」の支援対応です。日本全国、世界各国で様々な災害や社会的混乱が起こっています。それらの世界で起こっていることに対して無関心でいるのではなく、今の私たちにできることを考え、行動に移します。それは、現地支援かもしれませんし、募金活動かもしれません。その時々において私たちの答えを導き出し、行動をもって立ち向かいます。「自」の問題では率先して導ける存在となり、「他」の問題にアンテナを張って行動に移す。もしも将来、社会に不安が溢れ、人々が下を向くことあったなら、私たち青年会議所が率先して明るく照らす活動ができるように進めて参りましょう。
最後に
幼少のときに西宮のまちに引っ越してきた私は、30年を超える月日をこのまちで過ごしました。人生におけるほとんどの思い出は西宮のまちにあります。このまちは私にとっての故郷です。そして私の3人の子供たちの故郷もこの西宮になるでしょう。その大切な場所を、先達が作り上げてきてくれたこのまちを、さらに良いものにして未来に遺していきたいと思っています。
未来を創るのは今を生きる私たちです。限りある命の中で、今この一瞬と向き合い、後悔 のない選択を続けなければなりません。自分自身の未来、まちの未来を創るのは私たちで あるという自負と自覚を持って行動してまいりましょう。
私たちが選択し行動した一つひとつが、自らの描く未来に続いていくことを心に留めて日々を過ごすことにより、自分自身を、愛する人たちを、このまちを、この国を、この世界を、私たちは自らの行動で変えていくのです。
それは、誰もが自分自身を大切にし、家族、仲間そして他者を想うことができる未来。
地域の輪が広がり、つながりを持って共に力を合わせることができる未来。
世界に目を向け、共通目標の達成に向かって進んでいく未来。
子供たちが未来を切り開く力を身に着け、大人と一緒に描く未来。
その未来を創るのは私たちです。
さあ進み出しましょう。未来への一歩を。